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■雲ノ平植生復元活動

06 従来の施工方法の問題・課題点

山岳地、特に国立公園内における公共事業で行う多くの登山道工事や植生復元の工事は、自然の摂理が適った工法が用いられていないことが数多く見受けられます。その背景を理解するためには国立公園を運営するスタンスの問題を紐解く必要があります。

日本の国立公園はアメリカやヨーロッパ諸国のシステムを参考にして設立されたものでしたが、自然保護思想、すなわち自然そのものを尊重する考え方を社会に根付かせる過程が十分になかったために、自然の価値に重きをおくというよりは、観光政策としてネームバリューをつけることに傾斜していた感が否めませんでした。欧米諸国では自然保護思想や、自然科学、アクティビティーとしての登山が同時並行的に発展し、それらのパワーバランスを良い状態に保つために活発な議論が展開されてきたのに対し、日本では思想や学問にまつわる世論は非常に弱く、レジャーとしての登山が偏った形で大衆的な広がりを見せてきました。結果的に自然の魅力や現状を国民に対して客観的に伝え、共有するために不可欠な学問的なアプローチが乏しく、原生自然を扱う技術や見識も、それらにまつわる人材を育むための仕組みも圧倒的に不足している状況です。前述した通り、北アルプス全域に環境省の自然保護官が5名しかいないのに対し、アメリカのイエローストーン国立公園は正規雇用の職員だけで330名、イギリスのピークディストリクト国立公園は同280名という数字を見ただけでもその力の入れ方の違いは理解できます。さらに日本では国立公園は環境省の末端的な業務として取り扱われており、アメリカにおけるナショナルパークサービス、イギリスのナショナルパークオーソリティーのように国立公園を専門的に扱う機関が存在していません。そのため国立公園の法体系である自然公園法も行政が能動的に関わる姿勢ではなく、開発圧に対して様々な規制を設けることにより自然を壊されないようにする考え方であり、それゆえ公共事業などの際に予算はついたとしても、残念ながらそれを生かすだけの見識、技術、人材が存在していないのです。これらの結果として、残念ながら従来行われてきた多くの公共事業では、計画、管理、評価、総合的な考え方などのソフト面、施工技術や素材などハード面でも自然の摂理に寄り添った形になっていないばかりか、むしろ自然環境や景観を壊す工事さえもが、問題視されずにまかり通ってしまう状況だったのです。

●構造及び工法の問題(土留各種)

●景観的問題



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