雲ノ平 特集 トップに戻る
雲ノ平山荘

■雲ノ平 特集 読み物:2009年~2010年 新雲ノ平山荘新築工事について(1)

2009年~2010年
新雲ノ平山荘新築工事について(1) 1/3

(この文章は2011年春、新雲ノ平山荘落成の半年後に書き、ななかまど14号に掲載した物に若干の加筆、修正を加えた物です。)

新しい雲ノ平山荘は2010年の秋をもって九分通り完成した。思えば計画から3年間、気の遠くなるような凝縮した時間が、あっという間に過ぎた。 まだ全てを客観的にみる自信はないが、今回はなるべく頭の中を整理して、新しい小屋の特徴や意図などを表現してみようと思う。
またはじめに、この建築に並々ならぬ覚悟と好奇心をもって御尽力いただいた伊藤棟梁、渡辺棟梁、荒川社長、設計士の篠さんをはじめ、全ての関係者に心からの感謝と尊敬の気持ちを表したい。わがままに付き合っていただき、ありがとうございました。

建築中の雲ノ平山荘

始まり

事の始まりは2007年秋。水晶小屋の新築工事も最終盤にさしかっていた時期、次は大分傷んだ雲ノ平山荘を修繕しなくてはならないという話になり、仕事の合間を見て荒川製材所の渡辺棟梁以下数名の大工に雲ノ平山荘を診断してもらった。その当時はまだ愛着のある古い小屋を再生、増築する事を考えていたのだが、しばらく小屋を見て回った棟梁の判断は「もう数年程度しか持たない」「修繕のほうが高くつく」という非常に厳しいものだった。
古い小屋は父によって合理的に設計されたものだったが、建設当時の資材の運搬手段が歩荷しかなかったことから、歩いて二日掛かる雲ノ平までセメントを運ぶことが事実上不可能であり、木の土台を現地の溶岩に直接載せて建設するしかなかった。その為長い年月の中で湿り気を含んだ溶岩(地面)から土台が水分を吸い上げ続け、次第に木材の腐食が進んでしまったのだ。最終的には床下のほとんどの木材が朽ち果ててしまっていた。
そこで既に水晶小屋の再建を手掛けていた兄にも相談を持ちかけ、残念な気持ちもあったが、結局建て替えるのが将来的にも良い選択だろうと言う結論に至った。それからは作るからには弱点のない最高のものにしたいという思いあるのみだった。

取り壊し前の初代雲ノ平山荘

旧雲ノ平山荘

旧雲ノ平山荘についての個人的な思いは前回のななかまどで書いたので省略するが、今回の計画でまず思ったのは、あの小屋のようにすばらしいものにしたいと言うことだった。長い年月で風土に溶け込んだ佇まいや、現地の森の木、トウヒやダケカンバ等を必死に組み上げた職人たちの息遣いや素材感は特に心に刻み込んだ。
それからあの独特な屋根の形状だ。風や積雪に強い構造上の合理性もさることながら、雲ノ平のゆるやかで開放的な地形に実に良く栄える外観だったと思う。自分にとっても、以前訪れた事のある人々にとっても懐かしい場所であり続ける為に、またその景色を雲ノ平の文化として定着させる為にも、屋根の形を踏襲することはゆるぎない前提だった。建物の立つ方位や主家の長短辺の比率、東側のテラスなども旧雲ノ平山荘にならった。

初代雲ノ平山荘

水晶小屋

第二の身近な手本は兄の設計した新しい水晶小屋だ。水晶の激しい環境に強靭に耐える構造を持ち、あくまでも必要最低限の簡潔な機能性と美しさを明確に志したすばらしい建築だと思う。また日本の伝統建築を基本に据え、ヒメコマツやカラマツなど、水晶小屋周辺(現地)で生息する樹種の木材を各地で仕入れた事や、有効な環境技術を可能な限り導入した事など、兄の職人気質ならではの創意に満ちた小屋だ。水晶小屋から学んだことは各所に生きている。

雲ノ平 特集 トップに戻る
ページトップ