02 雲ノ平の植生荒廃の現状 | 雲ノ平植生復元活動 | 北アルプス黒部源流 | 三俣山荘・雲ノ平山荘・水晶小屋
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■雲ノ平植生復元活動

02 雲ノ平の植生荒廃の現状

1940年代まで雲ノ平は、狩猟者やごく一部の登山者が訪れることはあったかもしれませんが、原始の姿のままでした。1950年代に入り、登山者が雲ノ平に入るようになってきました。ごく少人数ならば、表面にある植物は痛めつけられてもある程度回復したかもしれません。しかし何十人も何百人となるとその踏圧により植物が痛めつけられ枯死し、歩いている面に裸地が現れます。

一度裸地化した場所は植物を失っていることもあり、水が吸収されにくくなります。雲ノ平は表土の下に水を透しづらい火山由来の粘土層があるため、雨が降ると土がぬかるみの状態になりやすく、傾斜地では裸地化した登山道の沿って表土の流出が始まります。また、特に水があつまりやすい凹地や、低い場所には水たまりもできます。そこを登山者が歩こうとすると、登山靴が汚れるのを嫌って、登山道脇の植生がある場所やなるだけ乾いているところを通ろうとします。

登山道周辺部を登山者が縦横無尽に歩いたり、ショートカットしようとしたりして、登山道が複線化し、複線化した登山道同士の幅が狭いと、崩れ、ついには幅広な裸地が出現します。同時に、一度植物が失われてしまうと、融雪、降雨、霜柱、乾燥など、多くの自然現象が裸地の洗掘原因になります。雲ノ平は日本海側に位置するため、冬は季節風の影響により豪雪地帯となります。大量に降り積もった雪は自重で押し固められ、斜面地の場合、押し固められた雪が溶けながら植物の表面をすべるようにずりおちることになります。ここで、裸地が出現している登山道があると、いわば皮膚にできた切り傷のようなものであるため、雪がひっかかり表土を押し流してしまいます。土が流出した場所は、周辺に比べ低い場所であるため水があつまりやすくなり、降雨や雪解け水によってもさらに土が掘削され、流出します。また秋口には昼夜の温度差により霜柱が起こり、表面の土を押し上げます。日中は霜柱が溶け、ぼろぼろとした土が残ります。このように融雪、降雨、霜柱がくりかえされることにより、出現した裸地の表土が削り取られ、洗掘が進みます。

洗堀が一定以上進行すると、粘土層の周辺を網目状に流れている伏流水の水脈を断ち切ってしまうため、降雨時や、融雪時には地層から水が湧き出し、侵食された登山道を流れる為、それも洗堀の一因になります。表土がすべて流失してしまうと粘土層が表在化し、登山道全体がいわばウォータースライダーのようになり、土壌流出をとめることはできません。このまま放置しても、植物にふさわしい土壌環境がないため、自然による植生回復はむずかしいものと考えられます。


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