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雲ノ平山荘

■雲ノ平 特集 読み物:2009年~2010年 新雲ノ平山荘新築工事について(1)

2009年~2010年
新雲ノ平山荘新築工事について(1) 3/3

間取り

間取りについては機能性から考え、その上で従来ありがちな詰込み型の山小屋のスタイル(いわば暗い客室あるのみと言うような)ではなく、機能的な中にも開放感を感じられるものにした。 食堂やロビーなどの団欒スペースはなるべく大きく空間を取り、トイレや倉庫、客室などは機能性と居住性のバランスを考えつつ、可能な限り空間効率を重視して設計した。そしてそれら全ての要素が有機的に作用し合って、視覚的な面白さを醸し出せるようにもしたかった。

日本建築の構造の美しさを引き立たせ、同時に木造帆船の内部のような立体的な面白さを感じられる建物にしたいと考えた。いつからか僕の印象として、旧雲ノ平山荘の2階の柱の無い大きな筒状の空間は、なんとなく船の底のようだと感じていた。 こじつけのようだが、船の間取りは実に効率的に考えられている上、思えば船は常に水面下に半分沈む状態にある訳だが、山小屋も冬には雪に沈み、夏でも豪雨を伴う嵐や突風に晒されていると言う点では、立地の環境の厳しさが似ているのではないかとも思った。山小屋は山の中の船、と言う感覚はどこか自分の中では面白かったし、説得力のある事だった。新しい小屋も多少複雑な間取りではあるが、2階に上がると屋根裏の構造が端から端まで見えるようになっている。

雲ノ平山荘 間取り

木材

この建築の最初の具体的なアクションとして僕は木材と職人探しの旅に出た。職人については水晶小屋を手掛けた荒川製材所に依頼する事はもちろん考えていたが、まずは自分で確認しながら進めようと思った。旅先は日頃から馴染み深い東北地方で、久しぶりに会う友人を訪ねつつ回る事にした。
なぜ東北かと言えば、とりあえずは雲ノ平に自生するトウヒなどの希少な木材が寒冷な地方ならばあるかもしれないと思ったからだ。各地で様々な木を見たが、高山の木はどこに行っても木材としてのまとまった流通は無く、結果的にこの旅では青森の津軽地方で出会った青森ヒバと栗の材が最大の収穫となった。古くから栗は建物の土台などに、ヒバは風呂桶などに最適の木材(のひとつ)とされており、日本の広葉樹と針葉樹でそれぞれもっとも湿気などへの耐蝕性がある木材なのだ。またそのように有用な木材である為に既に材料が枯渇し始めており、今回仕入先に出会えた事はとても幸運な事だった。この旅で僕は木材の果てしなく奥が深くて魅力的な世界にすっかり取り付かれてしまった。構造にせよ、意匠にせよ、まずは木の存在そのもの、生命感や質感などを感じる事が日本建築の本質なのかな、と薄らと分かった気がした。

雲ノ平山荘 木材

その他この小屋で使った主要な木と言えばカラマツとアテだ。カラマツは狂いやすくヤニが強い性質から扱いが厄介な木とされているが、やはり耐蝕性に優れ、強度があり、独特な赤みを帯びた美しい木材だ。これは伊藤棟梁の伝手で佐久地方のカラマツを使ったのだが、佐久のカラマツはすばらしい。アテは能登半島におけるヒバの別名で、荒川製材所で仕入れてもらった。青森ヒバと基本は同じだが、生命力の強さが若干勝っていたかもしれない。要するに今回はいずれも腐りづらい木材で、ヒバと栗とカラマツの小屋になった。

以下は使用した木材の樹種と用途 柱材=青森ヒバ。大黒柱、角梁、桁等の横架材、一部内装材=能登アテ。土台、2階丸太梁=栗(青森)。1階大梁=高瀬ダムに浮かんでいたコメツガとヒメコマツ。小黒柱、根太や筋交、床板、野地板、外壁板、建具材など=カラマツ(佐久)。一部内装材=杉(新潟)。建具鏡板=ネズコ(飛騨)。受付カウンター=山桜(長野県)。

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